中村好文さん設計の住宅を見る機会があり「住宅巡礼」に出向いてきました。家の外観は単一の素材であっさりとした感じに仕上がっていましたが、内部は暮らしを考えた工夫に満ちたデザインが随所に見られ、やっぱり目を奪われてしまいました。こうした建物見学にいい加減飽きている家の奥様ですが、今回は一向に帰ろうとしません。
(階段室をみるだけでもなんだか詩的な印象)
センターコアのさっぱりとした合理的プランの中にも、リビングを見下ろす小さな書斎、洗濯物シュート、勝手口、屋内の洗濯干し場、回れるプランのキッチン、仕事場と住居を区切る壁内へ消える引き戸、真鍮製のレトロな金具類などなど、沢山の見所があるのです。(気が付かなかったものもあるのでしょう。)
細かな工夫と言っても華美で設備機械的なものではなく、むしろ工作のような工夫で、好感がもてるのでした。時間を経たそれらは素朴な趣もあり、古い家で思わぬ細工や工夫を発見したときのような嬉しさを感じたのです。
床は合板(ベニヤ)仕上。コストを抑えるためとの事でしたが、色々な造作家具などを見ていると、ローコストかどうかも分からなくなってきます。中村さんは著書のなかで「ローコスト住宅は家具をケチってはいけない」と言うようなことを書かれていたので、そういうことなのかも知れません。
中村さんの他の住宅は見たことがないのですが、わりと抽象的な空間の中に素朴な木製のキッチンがやさしく存在感を放っているのが印象的でした。